鹿児島・湧水町 想定外の豪雨に頭抱え 水害常習地域堤防かさ上げ 浸水対策も実らず
2006年 7月26日 (水) 10:10
九州中南部を襲った豪雨に伴い、鹿児島県内で唯一、避難指示(150二世帯366人)が続く湧水町吉松地区(旧吉松町)は、過去に何度も水害に見舞われた。1997年水害の158戸を上回る286戸が床上浸水した今回は、避難所となった町体育館も1階が浸水するなど想定外の豪雨となった。昨年9月の台風でも浸水被害を受けた住民からは対策の遅れに「人災」の声も出ている。
吉松地区は97年、台風による大雨で川内川支流の桶寄川がはんらん、町の中心部が冠水した。それ以前も度々洪水などがあり、国土交通省は99年度に「川内川床上浸水対策特別緊急事業」に着手。桶寄川は堤防をかさ上げした工事が2003年度に終了した。
しかし、またも桶寄川がはんらんした。近くの農業竹中幸次さん(68)は「川内川の抜本的工事が必要と何度も要望していたのに」と憤る。
住民には、町の中心部から約4キロ下流の川内川の阿波井(あばい)堰(ぜき)が水害の原因と指摘する声もある。井堰がダムの役目を果たし、水がせき止められるからだという。1960年代には井堰の撤去運動が起こったこともある。だが、国交省川内川河川事務所(同県薩摩川内市)は撤去しても大きな効果はないとしている。
米満重満町長は避難所の町体育館が浸水した事態を受け町の防災計画全体を見直すと明言。「今回以上の雨に耐えられる川の改修が必要」と話した。同町中津川の柏木正子さん(72)は「雨が降るたびに怖い日が続きます」と話している。
=2006/07/26付
西日本新聞朝刊=